Amazonを追撃するJet.comの挑戦

Amazonを追撃するJet.comの挑戦

これまでAmazonの領域を侵した企業は容赦なく叩き潰されたか吸収されてきたが、Jet.comは勇敢にもAmazonに挑戦する企業のひとつだ。

Jet.comは、2015年7月21日にアメリカでオープンした通販サイトで、Amazonよりも日用品を安く売るビジネスモデルを特徴としている。一見無謀にも思えるこのビジネスモデルだが、それよりもまず驚くべきはその資金調達額だ。Jet.comは、シード段階(サービスローンチ前)で既に2億2000万ドルを調達、Bain Capital Venturesらの米投資企業が参加し、このうち一部はアリババグループからの投資となっている。さらに2015年11月にFidelity Investmentから5億ドルを調達、これまでのトータルの調達額は7億ドルを超えている。一体なぜこれほどの資金を調達することが可能だったのか?それにはCEOのバックグラウンドが大きく影響している。

CEOのMarc Lore氏

CEOのMarc Lore(マーク・ロア)氏はかつてEコマースの分野でAmazonと対等に戦った経験を持つ。

Marc Lore

↑Jet.comのCEO、Marc Lore氏

彼は2005年にベビー用品を専門に扱うDiapers.comというオンラインストアを設立し、その運営会社であるQuidsi,Inc.をアマゾンに5億5,000万ドルで売却している。QuidsiはもともとDiapers.comに始まり、洗剤などを扱うSoap.comを追加展開、2016年3月現在では以下のサイトを運営する企業であり、Amazonが買収した2010年11月当時はDiapers.comとSoap.comがサービス展開されていた。
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Marc Lore氏はこの時の売却資金を元手に、2014年にJet.comを設立。実際のサイトリリースは2015年7月であったが、再びAmazonに挑むベンチャー企業経営者としてサービス開始前から投資家らの間で注目されていた。

Jetのビジネスモデル

Jet.comは当初Costcoのビジネスモデルを意識していた。顧客から$49.99の年会費を徴収する代わりに、商品に対する大幅なディスカウントを可能にし、顧客に還元していく仕組みだ。$49.99という年会費はCostcoのGold Star会員の年会費よりも$5安く、さらにAmazonのPrime会員の年会費よりも$50安い。

Jetでは主に日用品を取り扱っているが、このカテゴリは1ドルや0.5ドルといった些細な価格の変化が購買行動に弾力性をもたらすため、他店より0.1ドルでも安く販売することが重要となる。いかにカスタマーに対してお得感を伝えるか、その点に関してJetは以下のような工夫を行っている。

Jetは独自に価格エンジンを開発し、カスタマーがカートに商品を入れるたびにディスカウント額を自動計算し、その都度「どれだけお得な買い物ができているか」を教えてくれる。プロダクトページにもその仕組みが強く現れており、例えば同一商品を複数個カートに入れるといくらのディスカウントが受けられるのかが一目でわかる仕組みだ。

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↑Jetのプロダクトページ。個数を変化させるとその都度割引額が計算される仕組み

また返品は30日間有効だが、もし購入時点でカスタマーが返品の権利を放棄した場合、さらに割引が受けられる。Jetでの買い物では、カスタマーが決済するギリギリのタイミングまで割引が続く。

さらに、JetではJetAnywhereというアフィリエイトプログラムを用意しており、Jetが提携する加盟店で買い物をすれば、一定のパーセントのアフィリエイト報酬をJetCashとして得られ、次回以降のJetでの買い物に利用することができる。このJetAnywhereのプログラムにはアメリカの有名ブランドのMacy’sやGAPなども加盟している。

徹底した価格計算

実はJetは2015年10月に会員費を徴収するビジネスモデルをピボットさせている。Marc Lore氏によれば、他店よりも4〜5%安ければカスタマーの消費行動にそれほど影響はなく、より厳密な価格計算を行うことで年会費を徴収しなくてもビジネスの成長は可能だと述べている。

このことから、Jetは価格計算のアルゴリズムに絶対的な自信を持っていることがわかる。価格計算のアルゴリズムといっても、それがどれだけ難しいことが、一度でもEコマースを運営したことのある人であれば容易に想像ができるはずだ。例えばJetは複数の注文を受けた際、トータルの価格を微調整する。これはボックスに入る商品の個数や重さによって送料が微妙に変化するからであり、これを瞬時に計算してカスタマーに割引額を知らせることは容易ではない。あのAmazonですらこのあたりの計算はもっと大雑把に行っており、例えば同じ商品を注文したとしても、一つのBoxで配送されることもあれば複数のBoxで配送されることもあるだろう。

Jetは現在1000万以上の商品すべてについてこのような価格計算のアルゴリズムを適用しており、実際に商品を箱に詰めずとも、3D版のテトリスをやってのけている。ほとんど天才集団だ。もし素人が同じようなことをやろうとすれば、おそらく気づいた時には赤字販売になっているに違いない。

JetのGMV(Gross merchandise volume:取引総額)は2015年9月時点で$2,000万に達したと言われており、スタートからわずか2ヶ月で多くのユーザーが利用するショッピングモールになりつつある。消費者がより安い商品を求めてJetを利用するのか、それともPrime会員の特典に惹かれてAmazonを利用するのか、今後の動向が引き続き注目される。

参考記事:

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