インドのEC市場規模と3大スタートアップ

インドのEC市場規模と3大スタートアップ

今世界で最も注目されているEコマース市場といえばインドであるが、インドにおける電子商取引の市場については2009年以降年間30%のペースで成長しており、現地の大手コンサルティング会社によると、2023年までに世界の約7%に相当する6兆円規模に拡大すると予測している。

インドではいまEコマースの市場がどのように盛り上がりを見せているのか?また現地ではどのようなECサイトが市場シェアを握っているのか?日本からはなかなか伺うことのできない様子を今回まとめてみる。

 

すでに絶対数では日本よりも多いネットユーザー数

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Source from:Number of internet users in the Asia Pacific region as of January 2016, by country

EC普及率は一般的にインターネットの普及率とともに上昇していく傾向にあるが、Statistaの統計によると、アジアリージョンでのインターネットユーザー数は1位が中国で6億8,000万人、次いでインドが3億7500万人となり、日本は三位に位置し1億1,500万となっている。

人口の母数が日本の10倍以上もある中国やインドは、たとえインターネットの普及率が低くても、結果として日本よりも多くのネットユーザーを有することになる。今後この格差はますます開いていくことが予想され、将来的には日本市場の持つ優位性が極めて限定的になる可能性が高い。

またIDC調査会社の発表によると、インドにおける2013年携帯電話出荷台数は2億5700万台で、そのうちスマートフォンは4400万台であった(前年比約2.7倍)。2014年に入ってからもスマートフォンの比率は上昇しているが、まだまだフィーチャーフォン(一般的な携帯電話)が主流となっている。すなわち「インターネットにはアクセスできているがスマートフォンではない」ユーザーがまだ大多数であり、スマートフォンの普及が今後のEC活性化の鍵を握ると言っても過言ではない。

 

EC市場規模は2016年には380億ドルと予測

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Source from:Online retail sales in India from 2009 to 2016 (in billion U.S. dollars)

次いで、インドのEC市場規模に関しては380億ドル(日本円でおよそ4兆1,800億円 $1≒¥110)と推計されている。経済産業省の資料によると日本の2014年のBtoCのEC市場規模がおよそ11兆円とされており、日本の1/3程度の規模にはすぐに到達してしまう計算だ。伸び率から推計しても、日本が優位性を保てるのはあと数年の間かもしれない。

 

インドのEC化率は2018年までに1.4%に成長か

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source from: E-commerce share of total retail sales in India from 2013 to 2018

EC化率とは、市場の取引総額全体に対するECの取引額を示した指標で、この数値が高いほど日常の取引がほとんどオンラインで行われていることを表している。インドでは2018年までにEC化率がおよそ1.4%に到達すると予測されており、日本のEC化率の4%と比較しても、この点はまだ低い。

ただしインドは日本の10倍以上の人口を有するため、この程度のEC化率の差は人口総数でカバーできてしまう。1.4%でも十分に日本以上の市場規模に到達してしまうだろう。

 

オンラインチケット予約が半数以上を占める

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Eコマースというと日用品や家電などのショッピングをイメージしがちだが、実はインドのEC市場全体において実に65%がトラベル関連の取引となっている。航空、鉄道、バス、パッケージツアー、ホテル、レストラン、映画、イベントのチケットを仲介するMakeMyTripRedbusBookMyShowなどが大手のサイトとなっている。逆に普段我々がイメージするオンラインでの小売販売に関しては市場全体の35%程度に留まり、クレジットカードや物流網などが整備されて来れば今後更なる成長が見込めてくる。

 

課題は配送網と決済方法か?

インド合同商工会議所(Assocham)の調査によると、インドではEコマースを利用する年齢層が低く、18-35歳のユーザーが全体の90%を占めるという。逆に利用しない層への調査によると、Eコマースを利用しない主な理由として商品検索やオンラインサービスの不便さ(30%)、配達料金の高さ(20%)、銀行口座情報などをオンラインで入力することへの不安(25%)、配達時での損失の可能性に対する懸念(15%)、クレジットカードやデビットカードの保有有無(10%)などが挙げられているとのこと。

特にインドでは注文した商品が届かないといったトラブルが頻繁にあり、利用者の多くはCOD(Cash on Delivery:代金引換)を好む傾向にあるようだ。CODであれば、たとえクレジットカードを持たずとも注文することが出来るため、便利さと安心を担保することができる。販売者や配送業者にとっては手間がかかるが、マーケット全体の信頼が担保されるまでしばらくこの状況が続きそうだ。

 

インドECの3大スタートアップ

インドのオンライン小売市場は3つのスタートアップが独走している状況だ。それぞれFlipkart・Snapdeal・Amazon.inであるが、どのような特徴があるのだろうか?

 

Flipkart

flipkart
Flipkartは、IIT Delhi卒業であると同時に米Amazonでも勤務経験のあるSachin BansalとBinny Bansalが2007年に始めたECサイトだ。その後は携帯電話・カメラ・PC・家電・時計・洋服など幅広くカテゴリーを増やしており、名実ともにインドを代表するECサイトへと成長している。2014年には18,000万人もの顧客をかかえ、1日あたりの注文数が10万点を超えている。上場前にも関わらず評価額は150億ドルとも言われ、インドのITベンチャー界では知らぬものはいないユニコーン企業だ。2014年にはファッションのネット通販Myntra社を買収し、これが勢力拡大に更なら拍車をかけた。

Flipkartがここまで成功した理由として、2010年に利用者の信頼獲得を目的に代金引換(COD)による決済を導入したことが大きい。実は最初期にあたる2000年代にインドでスタートしたネット通販サイトも当時CODを行っていたが、わずか数年で取りやめた経緯がある。その理由について、後払いである上に配送業者からの売上金回収に2-4週間もかかったことから、キャシュフローを圧迫したものと考えられる。Flipkartは自社で配送まで行うことで、その代引決済をあえて導入。利用者の信頼獲得に成功し、最大手の地位を確立した。

 

Snapdeal

snapdeal
Snapdealは2010年2月にKunal Bahl(ペンシルバニア大学ウォートン校卒・元米Microsoft勤務)とRohit Bansal(IIT卒)が創業。当初は共同購入型クーポンサイトであったが、2011年9月にマーケットプレイス型のECサイトへピボットした。登録ユーザー数は2,500万以上、加盟店数は5万以上にのぼり、売上の約30%がモバイルユーザーからのものである。売上における中小都市(400万人未満)の占める割合が約60%と、他サイトと比べると中小都市への顧客リーチが強いサイトだ。

2014年にはソフトバンクがSnapdealに6億2,700万ドルを出資したというニュースは話題となったが、Flipkartを追う存在としてSnapdealは有力候補となっている。

 

Amazon.in

Amazon
3者の中で唯一外資企業であるのがAmazonである。インドには外資が直接投資を行うことに対する規制が存在し、米Amazonもインドへの参入は容易ではなかった。そこで考え出されたのがマーケットプレイス方式であり、自ら在庫を抱えて販売するのではなく、商品を出品する業者と購入者との間の取引の仲立ちをするというビジネスモデルだ。米国や日本ではすでに自社販売の他にこのマーケットプレイス方式を取り入れいるが、インドではこの手法に限定して展開している。

Amazon.inは当初は約700万冊の印刷書籍と1万2000タイトルのDVD/Blu-rayでスタートしたが、現在は家電、日用品、電子書籍、Kindle端末、音楽、ゲーム、アパレル、スポーツ用品など、約1700万点の商品を扱っている。Amazon.inを開設してから1年間、顧客や小売業者から予想を超える反応があったため、2014年7月に20億ドルの追加投資を行っている。

 

まとめ

このように見ていくとインド市場は何とも魅力的に見えるが、実際のところそれほど容易ではない。なぜならインドではForegin Direct Investment Policy(FDIポリシー)と呼ばれる外資企業の直接投資に対する参入規制が設けられており、一定の業種には厳しい規制が敷かれているのだ。逆に言えばこのFDIに規制のない業種であれば自由に進出が可能であるが、オンライン小売の業種はきっちりと規制がかかっており、たとえば日本からの100%投資に関しては政府認可が必要であったりと、そのハードルは高い。

小売分野の場合、外資の参入を安易に認めると例えば米国ウォルマートのような大企業が進出し商業施設を建設した際、地元の零細商店への経済的打撃が計り知れない。インドの零細商店はいわゆる屋台のような家族経営の店が多く、近くに商業施設が出来てしまうとそのほとんど潰れてしまうのだ。インド政府としても外資に対してオープンにすることで経済発展することは理解できるものの、国内の雇用も守る必要があり痛し痒しといった状況。マーケット自体は大きいものの、環境含め恐らく最もビジネスがやりにくい国ではないだろうか。

今後FDIは規制緩和の方向に進むと言われているが、実際のところどうなのか。引き続きインド市場に注目してきたいと思う。

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