日本企業の越境ECがうまくいかない5つの理由

日本企業の越境ECがうまくいかない5つの理由

ここ数年、日本では越境ECへのムーブメントが盛んである。越境EC事業者向けに多くのセミナーが開催され、また関連する多くのサービスプロバイダーが登場し、日々様々なサービスが提供されている。今やきちんと情報を収集していけば誰にでもすぐスタートできる環境が揃っているのではないだろうか。

それにもかかわらず、越境ECで結果が出せたという話をあまり聞かないのはなぜだろう?一部の尖った企業だけが成功事例としてフィーチャーされ、残りの99%の企業はスタートこそしたもののうまく軌道に乗らず撤退(あるいは塩漬け)という現実が存在する。

そこには日本のEC事業者が越境ECに対して勘違いを犯している5つのポイントが存在すると思っている。今回それらの基本的なポイントを順に見ていくことにする。

1. 越境EC=海外にモノを売ることだと勘違いしている

「越境EC=海外向けEコマース」というイメージを持っている企業は意外に多い。しかしこのイメージは必ずしも正しくはない。なぜなら、越境ECとは「国境を関係なくEコマースで販売すること」であって、日本だろうがアメリカだろうが国を意識することなく商材・サービスを販売していくことだ。

Amazonが展開するGlobal Sellingというキャンペーンの持つ意味が最もこれに近い。彼らは自国のアメリカでの販売はもちろんのこと、それに加えて日本や欧州、世界の市場で商品を横展開していくことを推奨しているのだ。決して海外市場だけに目を向けているわけではないというのが分かるはずだ。

ここを勘違いしていると、そもそも日本で売れていない商品を海外にも出し、その結果やはり売れないという現実に直面する。ここで重要なポイントは、海外で売れないのではなく、日本でも売れていないのだ。日本ほどの成熟したマーケットで買い手がつかないということは、商品力そのものが劣っていたり、後述するEコマースのスキルそのものが不足している可能性が高い。越境ECの本質はGlobal Sellingであり、先進国日本での需要は価値のある参考情報となる。

2. Webに対する知見が不足している

海外では思わぬ商品が人気となることもあるし、反対に日本では当たり前に売れている商品が見向きもされないということもある。生活環境や趣味嗜好も全く異なる異文化のカスタマーなのだから当然と言えば当然だ。

これが実店舗であれば、接客した店員は毎日貴重な経験を得るはずだ。こんな商品があるかどうか聞かれた、こんな商品を面白がってもらえた。彼らの行動が分かって来るうちに店舗での陳列を見直したり、店内のポップを理解されやすい表現に書き換えたりする。しかしEコマースではFace to Faceで接客できるわけではないため、顔の見えないカスタマーの行動を徹底的に分析しなければならない。彼らの検索キーワードは何だろうか、どこからの流入が最も多いのか、どこのページで離脱が起きているのか、どういった広告をどこに流すとコンバージョン率が高いのか、SNSでシェアされやすいのはどういったコンテンツかetc….。

日本と違い勘が効かないためデータに頼ることになるが、このデータ分析からのトライアンドエラーを繰り返せるITリテラシーを持つEC事業者が、現段階ではそれほど多くないのが実情だ。欧米諸国では自社にWebの専属部署を持つ企業が多いが、日本では雰囲気でなんとなく実践している企業が多い。これからの時代、Webに強い人材を積極的に採用し、専属のチームを設けていくのはマストになっていくだろう。

3. ターゲットを絞りきれていない

上記にも通じるところだが、データが取れないためむやみやたらに多言語で出品し、売れるのを待つという戦略が非常に多い。しかし世界中万人に受け入れられる商品でもない限り、その商品が売れる市場というのはある程度限られてくる。

例えばあなたの会社がエアコンのパーツを販売しているとしよう。日本で一般に普及している壁掛けタイプのエアコンは、実はアメリカではほとんど普及していない。彼らはセントラルヒーティングという家全体の空調を強力な室外機とダクトを通じて一括コントロールする仕組みを敷いている。国が変われば需要も全く異なるのだ。日本では売れているからという理由で英語で商品掲載しても、そもそも彼らには見向きもされないというのが想像できるはずだ。

ターゲットを絞るということは即ち、カスタマーのニーズを分析するということに他ならない。自分が売りたいものや自社の売れ筋商品を並べるのではなく、カスタマーのニーズを分析しそこに最適な商品を提供していく。国は違っても商売の本質は変わることはない。

4. 理想を追い求め売り方を間違える

これも犯しやすい間違いの一つだ。誰しも自社独自のECサイトというのを持ちたがる。今やECサイトを無料で開設できるサービスも多く提供されているため、パソコンになれない人でも頑張れば開設できてしまうのだ。日本語のページの他に、英語や中国語のページも作ってみる。世界中から注文が殺到する光景をイメージするが、現実はGoogleのクローラーすら来ないという有様だ。

あなたの商品は他で手に入らないユニークな商品だろうか?ユーザーが血眼になって探し、それでもなかなか見つけられない商品だろうか?もしそうでなく一般的な型番商品を扱っているのであれば、AmazonやLazadaに代表されるようなショッピングモールを利用した方が無難だ。

これらのモールはこういった型番商品を専門に扱う大型デパートだ。ユーザーも当然そこに商品があると思って探しに来る。集客力は抜群、しかしその反面価格競争に陥りやすいのが難点だ。価格競争に陥るからと自社のECで展開したがる事業者がいるが、そもそも商品に差別化がないのであればこれは苦しい戦いになる。誰でもスマートフォンで検索して比較できるこの時代では、型番商品であれば価格競争以外で生き残る道はほとんどないと言っていい。

5. 短期的に効果が出ないと諦めてしまう

Eコマースは実店舗と違い、地理的な制約を受けないだけでなく陳列できる商品も無制限だ。そのため「これだけ出品したのだから売れて当然」と傲慢に考えるEC事業者が後を絶たない。出品して1週間以内には何かしら注文が入るはずだ、注文はないにしても訪問客は数多くいるはずだ。しかし蓋を開けてみれば自分以外のアクセスはほとんどないという現実に直面する。

Eコマースは短期的に成果が出るものではない。前述の市場分析やトラフィック分析、それにトライアンドエラーを繰り返して少しずつ少しずつ改善を図っていくものだ。商品の写真がこれがベストだろうか、商品の説明文はこれで十分だろうか、決済までのプロセスが長すぎはしないか、広告を打つ場所は適切だろうかetc…やれることは山のようにあり、気の遠くなる作業が待っている。

Eコマースを始めたばかりの頃、99%はうまくいかないし、オープン初日からお客が殺到するなどということはまずない。しかしだからこそ小さな成功体験が楽しくもある。すぐに結果が出ないからと諦めるのではなく、もともと長期的に取り組む覚悟が必要だ。


まとめ

これまで日本は国内だけでも十分利益を享受することができたために、海外に目を向けるのが遅れてしまっていた。国内需要の低迷やインバウンド需要の増加を契機に越境ECが注目され始めたわけだが、これからの時代、大企業だけでなく中小企業あるいは個人であっても世界中に商品を販売していくのがスタンダードになっていく。

今やInstagramに英語のハッシュタグを付けただけで海外から反応が得られる時代だ。その気になればスマホを持つ中学生でも海外のファンに商品を販売することができる。実際、日本で有名なメルカリは米国でもサービスをスタートさせているし、今後は個人にも越境ECは当たり前に浸透していくだろう。

ここ数年越境ECへの急激なムーブメントは、慣れない日本人にとってはひとつの山場となっている。変化への順応は苦痛を伴うが、楽な道ばかりを選択していてはいずれ取り残されていく。全く取り組んでいないという事業者はかなり深刻に考えた方が良いかもしれない。

コメント0
CATEGORY :

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK